タイムゾーンにある元の投稿へのコメントからは、当時のフォティーナが新しいものだったことがうかがえる。あるコメントには「夜光塗料が経年変化して見えるように着色したみたいだ」とある。タイムゾーンで長く時計を扱ってきたウィリアム・マセナ(William Massena)は、eメールでこう述べている。
「これ以前にフォティーナを使った時計というのは考えつきません。3年後にJLCが、レベルソ トリビュート USエディションでもう一度フォティーナを使ったみたいです。オメガ OMEGA (アンティーク)しかしレベルソとなると事情が違ったのようで、フォティーナを使っていないバージョンも同時に発売されています」
「こちらでも考えてみますが、あなたが正しいようです。ルミノバの時代(2000年以降)に作られたメモボックス トリビュートはフォティーナを使った最初の例です」
興味深いことだが、タイムゾーンのフォーラムで「フォウ パティーナ」と最初に書かれた例は、ウィリアム・マセナが2011年のレベルソを紹介する投稿で見つかった。「フォティーナ」の語もきっと同じ時期に作られたはずだが、誰が最初に使ったかまでは分からなかった。
2011年のジャガー・ルクルト レベルソ「トリビュート トゥ 1931」。その年の時計を紹介するタイムゾーンの投稿を見ると、公開フォーラムで初めて「フォウ パティーナ」の語が使われている。画像、Timezone.com。
フォティーナの過去と現在
2008年には興味深い新作がいくつも登場した。例えば、ロレックスがヨットマスター IIをリリースしたのはこの年だ。現在のエイジドスタイル夜光塗料と同じほどに賛否が分かれた。リーマンショックが起きたのは2008年9月で、世界全体が金融危機に陥った。またこの年の5月には、ベン・クライマーというそれほど有名ではないが非常に熱烈な時計愛好家がウェブサイトで、当時驚きをもって迎えられた、オークション結果についての短い記事を公開した。それはエリック・クラプトンが過去に所有していたことがある1971年製ロレックス デイトナのオークションだった。落札価格は約5470万円で、それを報じたウェブサイトはHODINKEE.comだった。この時計は2015年に、5億円ほどで売りに出された。
金融危機の影響は今もまだ残る一方、ヴィンテージウォッチへの関心は(ほとんど)抑えられることなく高まり続けてきた。時計業界としてみれば、特定のブランドだけでなく急成長を遂げるヴィンテージウォッチ収集の世界とも直接繋がりをもてるということは、ヴィンテージスタイルの時計とヴィンテージスタイルの夜光塗料が売上を大きく左右することを意味した。