キャリバーL133.1には、職人が腕によりをかけ非常に丹念に仕上げ装飾を施しています。それらは、主要なディテールにおいて2017年モデルと異なります。アニバーサリーエディションでは洋銀製の受け部品の表面に粒状感を持たせ、ブランドロゴの刻印にブラックロディウム仕上げを施しています。クロノグラフ受けの手彫りの繊細な線もブラックロディウム加工で仕上げています。それによって模様に立体感が生まれ、伝統的な機構に現代的な雰囲気を醸し出しています。
工芸技能を駆使した装飾仕上げは、チェーンの線彫り模様にまで至ります。表面が曲面になっているトゥールビヨンの受け部分に施したブラックポリッシュは、最高度の技能と根気が要求される表面仕上げです。トゥールビヨンキャリッジを挟んで支持する2個のダイヤモンド受け石は、かつての最高品質クラス1Aの、F. A.ランゲ作の懐中時計を彷彿とさせます。
当時のA.ランゲ&ゾーネの最高品質の証しであった、ゴールド製チラネジを付けたテンプ、受け石を固定するビス留め式ゴールドシャトンも使用されています。ムーブメントの仕上げ装飾に花を添えるのは、ハンドエングレービング入りテンプ受けに収まるダイヤモンド受け石です。ウォルター・ランゲとギュンター・ブリュームラインは、ブランドを再興すると同時に1Aと呼ばれる当時の最高品質基準を取り入れました。それは私たちの製品哲学として、伝統を現代に伝えています。
トゥールビヨンとチェーンフュジー機構を相互に緻密に調整して連係させることにより、物理的に避けられない二つの干渉要因、すなわち重力と徐々に弱まるゼンマイのトルクを補正しています。A.ランゲ&ゾーネが、腕時計という小さな空間で初めてチェーンフュジーで動力を伝達することに成功したのは、1994年のことでした。フュジーと呼ばれる螺旋状の部品と香箱をチェーンで連結し、テコの原理を巧みに応用してゼンマイの動力を常時一定のトルクでムーブメントに伝えます。フュジー(均力車)に組み込まれた遊星歯車の働きにより、ゼンマイを巻き上げる時にも香箱から脱進機に途切れなく動力が伝達されます。
永久カレンダーとラトラパント・クロノグラフを連動させるのは、設計技師たちにとって至難の業でした。なぜなら、クロノグラフ機能の使用中にカレンダー表示が進むときに、機構が干渉し合うことも、振幅の低下によって歩度の安定性を損なうことも、あってはならないからです。ここで、A.ランゲ&ゾーネの高度に複雑なクロノグラフの開発における長年の経験が生かされます。ゴールドプレート仕上げのクロノグラフ針の上に重なるブルースチールのラトラパント針は、クロノグラフ針とは別れて一旦停止し、10時位置のボタンを押せばクロノグラフ針に追いつき再び一緒に動きます。このようにして、計時中に何度でもラップタイムをとることができます。サファイアクリスタルのシースルーバックからは、その切替えプロセスを制御する2個のコラムホイールの動きをつぶさに見ることができます。30分積算計を9時位置に配置して、クロノグラフ表示をすべて揃えました。